此処はエンドブレイカー!(TW3)に於けるキャラクター、サギリ・スカーレット(c09180)のブログです。
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草木も眠る丑三時。
漸く寝ようかというところであったその男は、ふと己の右手首に目をやる。
日に当たった事が無いとでも主張しているかの如き蒼白の中で際立つ紅。
…男が後生大事にしている紅の数珠があった。
男はそれにそっと口付けると何事かを小さく呟き、己の枕元へと置き目を閉じた。
“―――嗚呼、愛おしや。”
その呟きは誰に聞かれる事も届く事も無く、
ただ虚空に消えた。
漸く寝ようかというところであったその男は、ふと己の右手首に目をやる。
日に当たった事が無いとでも主張しているかの如き蒼白の中で際立つ紅。
…男が後生大事にしている紅の数珠があった。
男はそれにそっと口付けると何事かを小さく呟き、己の枕元へと置き目を閉じた。
“―――嗚呼、愛おしや。”
その呟きは誰に聞かれる事も届く事も無く、
ただ虚空に消えた。
=*=+=*=
「―――何とした事か…。」
男は目覚めたばかりではあったが既に覚醒しきったようで、頭に手をあてつつ呟いた。
…目覚めた時にはもう日は高く上り、人々もとうに活動を始めていたのだ。
―――昼近くである。
そういえば、夢の中でシスコードに起こされた気もする。あれは、夢ではなかったのであろうか。
そうであれば、宜しく無い。大変に宜しく無い。
後で詫びねばなるまい。
己が何者の気配にも気付かぬ程深い眠りにつくとは、珍しい事もあったものだ、とまるで他人事の如く考えつつ着替えと洗顔を済ませる。
そして布団を片付ける前に枕元へと手を伸ばし―――
―――果たして彼の掴んだ物は空気のみであった。
思わず虚空を掻いた己の手を眺める。
…無いのだ。己が後生大事にと枕元へ置いた数珠が。
―――無い。何処にも無い。
部屋中を見回すも、何処にもあの目立つ紅が見当たらない。
常日頃は老成しきったかの如く落ち着いている彼も、此の時ばかりは冷静さを欠いていた。
そして己の日の下に於いては不自由な両眼を恨み、悔やんだ。
それでもあわあわしつつ布団を畳み丁寧に仕舞う辺りは長年の習性とも言えよう。
また彼らしくもなく乱暴に部屋を飛び出すと廊下を走る。
足袋を履きながらよくよく掃除された廊下を風の如く馳せる事が出来るのは、流石である。
辿り着いた先に居たのはまだ幼い子供であった。
「―――シス!…私の、…赤い数珠を見てはおらぬか。」
「…あ、おはよ…おそようございます、なの。」
「…え、あ、ああ…。…おは――おそよう。」
「んと、んと、見てない、の。でも、私も一緒に探してあげる、なの。」
「…っ…そう、か……無いか。……うむ、ありがt「でもそのまえにご飯が食べたいのです」………今すぐ。」
そういえばこの子はまだ自炊もできないのだったとぼんやり思いつつ、台所へと向かった。
足取りは、重かった。
=*=+=*=
「…ごちそうさまでした、なの。」
「―――お粗末様でした。…さて、疾く片付けて探さねば…」
「あ、にゃんこさんにもご飯あげないと」
「…ああ…そうであった…。」
男は己の不甲斐無さに苦笑を浮かべつつがっくりと肩を落とした。
それでもこうしてはいられないとすぐに立ち上がると、それはもうカリスマ主婦でも敵わぬような速度でやらねばならぬ事を片付けていく。
「…後は、猫のご飯か。」
猫用のミルクと餌を皿に入れつつ、足早に運んでいく。
―――余談だが、彼は基本的に“餌”とは言わない。(前の旅団で餌といったのはスルーして下さい)
曰く、「私は猫をペットだなどとは思わぬ。思いたく無い」…だそうだ。
猫達は庭先で日に当たり転がっていた。
その姿にくらりとするも、頭を振り何とか持ち堪え庭先へ降りる。
猫達は主人の姿を視界に捉えると待ち侘びたとばかりに寄ってくる。
その素直さと可愛さに暫し心を癒されていた彼であったが、ふと見慣れた紅を見つけた。
…一匹の子猫の首に掛かっているそれは、まさしく、
「―――あ、ああ、あった……!!」
彼は急ぎその猫を抱き上げるとその数珠を外し手首に嵌める。
その瞬間、すうと心が静まっていくのが分かった。
しかし、何故この猫がこのような物を持っていたのであろうか。
…シスコードが知らないと言っている以上、勝手に部屋に入り持って行ったというのは間違い無いのだが―――それならば何故己は気付かなかった。
これ程可愛い生き物が、否、生に満ちた存在が近くにいて気付かない彼では無い。
何故、近頃はこうも“乱れる”のか。
分からない。
そのように首を捻る男を見、子猫はワケが分からないという顔でにゃおと鳴く。
その声に意識を引き戻され、まったく、と苦笑しつつもこの子に悪気などあるはずもないというのはよくよく分かっていたがゆえに、怒る気などは微塵も起こらない。
ノドを撫でてやるとごろごろと気持ちよさげに目を細めた。
「…良かった。……これは、“俺”なんかの命よりも、ずっとずっと、大切な物なんだよ。
…嗚呼、本当に、良かった…。」
普段の彼らしさは無い、しかし、嘘偽りの無い本来の彼として、男は笑った。
その笑みはくしゃり、と泣き笑いのようであり、とても不器用なものであった。
部屋へ戻った彼が見たものは、大惨事。
空き巣の被害にでもあったかの如き散らかりよう。
右を見れば箪笥の中から衣服が飛び出ている。
左を見れば本棚より大量の本が飛び出ている。
「あ、サギリさん。…どこを探してもみつからない、の。……むむむ、その右手にあるものは…」
「―――見つかっ、た。…お蔭様、で。」
「そうなの?…よかったよかった。一件落着、ね?」
「―――う、む。」
―――男は、失せ物が見つかった事を早急に伝えなかった己を酷く恨むのだった。
「―――何とした事か…。」
男は目覚めたばかりではあったが既に覚醒しきったようで、頭に手をあてつつ呟いた。
…目覚めた時にはもう日は高く上り、人々もとうに活動を始めていたのだ。
―――昼近くである。
そういえば、夢の中でシスコードに起こされた気もする。あれは、夢ではなかったのであろうか。
そうであれば、宜しく無い。大変に宜しく無い。
後で詫びねばなるまい。
己が何者の気配にも気付かぬ程深い眠りにつくとは、珍しい事もあったものだ、とまるで他人事の如く考えつつ着替えと洗顔を済ませる。
そして布団を片付ける前に枕元へと手を伸ばし―――
―――果たして彼の掴んだ物は空気のみであった。
思わず虚空を掻いた己の手を眺める。
…無いのだ。己が後生大事にと枕元へ置いた数珠が。
―――無い。何処にも無い。
部屋中を見回すも、何処にもあの目立つ紅が見当たらない。
常日頃は老成しきったかの如く落ち着いている彼も、此の時ばかりは冷静さを欠いていた。
そして己の日の下に於いては不自由な両眼を恨み、悔やんだ。
それでもあわあわしつつ布団を畳み丁寧に仕舞う辺りは長年の習性とも言えよう。
また彼らしくもなく乱暴に部屋を飛び出すと廊下を走る。
足袋を履きながらよくよく掃除された廊下を風の如く馳せる事が出来るのは、流石である。
辿り着いた先に居たのはまだ幼い子供であった。
「―――シス!…私の、…赤い数珠を見てはおらぬか。」
「…あ、おはよ…おそようございます、なの。」
「…え、あ、ああ…。…おは――おそよう。」
「んと、んと、見てない、の。でも、私も一緒に探してあげる、なの。」
「…っ…そう、か……無いか。……うむ、ありがt「でもそのまえにご飯が食べたいのです」………今すぐ。」
そういえばこの子はまだ自炊もできないのだったとぼんやり思いつつ、台所へと向かった。
足取りは、重かった。
=*=+=*=
「…ごちそうさまでした、なの。」
「―――お粗末様でした。…さて、疾く片付けて探さねば…」
「あ、にゃんこさんにもご飯あげないと」
「…ああ…そうであった…。」
男は己の不甲斐無さに苦笑を浮かべつつがっくりと肩を落とした。
それでもこうしてはいられないとすぐに立ち上がると、それはもうカリスマ主婦でも敵わぬような速度でやらねばならぬ事を片付けていく。
「…後は、猫のご飯か。」
猫用のミルクと餌を皿に入れつつ、足早に運んでいく。
―――余談だが、彼は基本的に“餌”とは言わない。(前の旅団で餌といったのはスルーして下さい)
曰く、「私は猫をペットだなどとは思わぬ。思いたく無い」…だそうだ。
猫達は庭先で日に当たり転がっていた。
その姿にくらりとするも、頭を振り何とか持ち堪え庭先へ降りる。
猫達は主人の姿を視界に捉えると待ち侘びたとばかりに寄ってくる。
その素直さと可愛さに暫し心を癒されていた彼であったが、ふと見慣れた紅を見つけた。
…一匹の子猫の首に掛かっているそれは、まさしく、
「―――あ、ああ、あった……!!」
彼は急ぎその猫を抱き上げるとその数珠を外し手首に嵌める。
その瞬間、すうと心が静まっていくのが分かった。
しかし、何故この猫がこのような物を持っていたのであろうか。
…シスコードが知らないと言っている以上、勝手に部屋に入り持って行ったというのは間違い無いのだが―――それならば何故己は気付かなかった。
これ程可愛い生き物が、否、生に満ちた存在が近くにいて気付かない彼では無い。
何故、近頃はこうも“乱れる”のか。
分からない。
そのように首を捻る男を見、子猫はワケが分からないという顔でにゃおと鳴く。
その声に意識を引き戻され、まったく、と苦笑しつつもこの子に悪気などあるはずもないというのはよくよく分かっていたがゆえに、怒る気などは微塵も起こらない。
ノドを撫でてやるとごろごろと気持ちよさげに目を細めた。
「…良かった。……これは、“俺”なんかの命よりも、ずっとずっと、大切な物なんだよ。
…嗚呼、本当に、良かった…。」
普段の彼らしさは無い、しかし、嘘偽りの無い本来の彼として、男は笑った。
その笑みはくしゃり、と泣き笑いのようであり、とても不器用なものであった。
部屋へ戻った彼が見たものは、大惨事。
空き巣の被害にでもあったかの如き散らかりよう。
右を見れば箪笥の中から衣服が飛び出ている。
左を見れば本棚より大量の本が飛び出ている。
「あ、サギリさん。…どこを探してもみつからない、の。……むむむ、その右手にあるものは…」
「―――見つかっ、た。…お蔭様、で。」
「そうなの?…よかったよかった。一件落着、ね?」
「―――う、む。」
―――男は、失せ物が見つかった事を早急に伝えなかった己を酷く恨むのだった。
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