此処はエンドブレイカー!(TW3)に於けるキャラクター、サギリ・スカーレット(c09180)のブログです。
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―――おい、タイトル最悪。
※いいのが浮かばなかった。しょうがない。
…これは、ギャグなのか?
※すみませんタイトルこれですが超シリアスです。マジです。
………………。
※無言が痛い…!
…あ、読む前に注意。この作品はわずかにネタバレを含みます。
何のだよ。
※そしてPLは文才が皆無です。最後の方はまた何を書きたかったのか分からなくなってしまった。
それでもよければどうぞ。
唯一の月は煌々と空に浮かび、
数多の星は茫と耀く。
紺碧の天上より降り注ぐ光が、地上を果てしなく続く路を照らしていた。
両側を草木に囲まれ、空へと伸びていくかのように伸びるその道を、男は歩いていた。
何処へという事もなく、ただ月を目指しているかの如く。
風貌はまさに流浪者といった体で、荷物といえば肩に掛けたリュックと、杖のみであった。
足取りは確としたもので、目指す先が見えているかの如くに迷いなどは微塵も見受けられない。
気の遠くなるような上り坂もそろそろ終わりが見えてきた。
月が間近に見える。
男の口元に、微かな笑みが浮かんだ。
しかし、その笑みは上りきった途端に消える事となる。
…否、消さざるを得なかったのやもしれぬ。
―――それはただ、佇んでいた。
月光を全身に浴びて尚暗いそれは、どれ程日の目を見ようとも決して明ける事の無い闇夜の如く、はたまた如何なる希望をも拒む絶望の如きであった。
―――しかし、それにしては何処か悲しすぎる。
如何にもその闇は己が望んだものではないと告げるかの如く、どうしようもなく悲嘆を纏っているのだ。
向けられた背が、全てを拒むと同時に救いを求めているのだと、語っているかのようでさえあった。
…何程の事にやあらん。それはただの青年である。
月を掴むかの如く手を伸ばし、黒々と背に流れる長髪を風に遊ばせつつ、静かに、ただ其処に在った。
それだけだというのに、この鼓動の早まり具合は如何したものか。
坂を上った事による疲労などでは決してなかった。
「―――其処なる者は人か、はたまた妖か…。…どちらにせよ、今宵の月は何とも美しい。」
―――のう、そうは思わぬか。
そう、涼やかな声が男の耳へと届く。
同時に、こちらを向いた顔の白さに息を呑む。
―――まるで病人か、それとも既に死人であろうか。
そう申しても過言ではない蒼白の顔は、声と同じく涼やかな笑みを浮かべていた。
ただ、何かが違った。
それは肌の色だとか、顔立ちだとか、そういったものではなく、
―――そう、目だ。
この青年は、目を開こうとしない。
両の目はひたと閉じられ、堅く錠を掛けられているかの如く、開く様子も無い。
だがそれもまた、この妙な落ち着きを構成する要素の一つであろう事は言うまでもなかった。
その声から顔から、歳は明らかに男よりも下であろう。
…だと言うのに、
「…あ、貴方は、誰ですか。」
喉より発せられ、口を抉じ開けて出てくる男のそれは、相手を格上と見做したものである。
…声を出して気付いた。
―――自分はどうしてこうも緊張しているのだ。
そしてこの“青年”はおそらく、それさえも見通している。
その閉じられた両目は、何も映しておらぬようでいてその実何もかもを映しているのだ、と。
漠然とではあったが、言い表せぬ確信の如きものがあった。
戸惑う男の姿を認め―――見ておるのか、感じておるのかは分からぬが―――“青年”はくすりと笑みを一つ零し、
掲げた手を下ろすと今度は顔だけでなく身体ごと男の方を向いた。
それはゆるりとした動きで、しかし緩慢さはなく、音も無く、まさに流麗といった表現が正しい。
月光の明るさに、かえって顕正には見えねども、
「―――さて、…“貴方は誰ですか”、と申したのであったかな?…まずはその答えだが、」
長身痩躯に遥か極東の装束を身に纏っているであろう事、…何やら杖のような物を持っている事は分かった。
「―――私は、…名乗るほどの身にも非ず。…とは、些か、意地悪かね。」
…もしかしなくとも、男はからかわれていたのだろう。
しかし、得体の知れぬ緊張を感じていた男は、そうとは気付く筈も無かった。
「い、いいえ、あ、あの、」
「…ああ、…落ち着きなさい。」
「す、すみません。…あの、あなたは、……すみま、せん、もう一つ質問をしても、良いですか。」
…話しているだけだというのに、喉はみるみる渇いていき、汗は吹き出てくる。
今の自分はさぞや滑稽であろう。
男は思う。
「―――ふむ、質問責めか。…これはこれは、初対面で、よくも、のう?ふふ」
「すみません、…すみません。…失礼を、」
「…否、良い。気にしておらぬ。…ああ、私もからかいが過ぎたか。相済まぬ。答えられる事ならば、答えようぞ。」
「あっ、では、あの、…あなたは、何のお仕事を。」
“青年”は、浮かべた笑みこそ変わらねども、細筆で描いたかのような形の良い眉をくっと寄せた。
それは出逢ってから初めての、彼の感情表現。
…彼はうっすらと困惑の色を浮かべた。
「―――はて、これは困った。…その質問には答えられぬ。…そも、何故私の事を知りたがる。」
「それ、は、…自分でも、何が何やら。」
「…成る程、成程。…いやはや、矢張り人間とは、これだから面白い。己を知らずして、他の者を知ろうとする。
知れば知ったで、何をするというでもなく、…それは単に己を満たす為のみよ。
はたまたそれが己よりも悲しいものであった場合、情けでもかけようか。同情を、くれてやるか。
―――ふ、ふ、…いや、結構、結構。
私はこれでも心を持った人であるがゆえに、解らぬでもない…。
…いやなに、興味深いぞ。
人とは得てしてそういったモノであるがゆえに、のう…。」
妙な事を言う“青年”だと思った。
まるで、自分が人間ではないかのように。
「―――そう、私は“変わった人間”でな…。」
…心を、読まれたのかと、畏怖や何とも言えぬ不気味さにより身体が跳ね上がりそうになるのを必死に堪える。
「…しかし、かと言って変質者と思われるのは心外でのう…。…例えば、 。
…精神異常者の如く、手当たり次第に、見境無く 、などといった事は好まぬ。」
“青年”の言っている事が、おかしいというのは男にも分かる。
しかし、同時に男は己でも分からぬ間に納得してしまっていた。
…否、納得させられていたのだろう。
初めよりその青年の存在そのもの、または放つでもなくその身より溢れ出るような雰囲気―――一種の圧迫感により、“納得せねばならぬ”と言う事を全身でもって感じ取っていたのだ。
さもなくば、
さもなくば、自分は、
―――赦されぬだろう。
…そう、全身で理解したのだ。
「―――ゆえに、そう、…御主が、怯える事はないのだ。」
―――それは、赦しの言葉。
「―――と、申してやる事が出来れば良かった。」
…では、無かった。
その瞬間、男の全身を支配したのは絶望であった。
逃げろ。逃げねばならぬ。
分かるが、身体が動かぬ。
いっそ、戦え。斬ってしまえ。
男は杖を取る。
中に仕込まれた刃を解き放たんと―――
―――そして、男の身体を高熱が奔る。
赤々と溶かした金属を体内に注がれたかのような熱。
痛みは、ない。
己の身体が制御を失い傾くのを感じながら、男が最期に見たものは、
月光に煌く、細長い刃。
男が杖だと思っていたものは、…己の得物と同じく、仕込刀であったのだ。
「―――御主、血の臭いが濃すぎるぞ…。…何の罪も無い人間の、怨みの臭いが。」
…次第に暗がりへ墜ちてゆく意識の中で、男はまたもや気付く。
―――嗚呼、初めに感じた圧迫感。あれは―――、
―――隠しても尚溢れ出る、彼の殺気であったのであろう―――
そうして、一人の人間が迎えるべくして終焉を迎える事となった。
「―――これで、良かったのであろう、 …。」
月を仰ぎ見て呟く男の顔は、普段の彼からは想像もつかぬような悲痛な笑みで覆われていた。
「―――そなたの為ならば、私は、何でもやってみせよう…。」
―――それは、希望であり、絶望の言葉。
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